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東京高等裁判所 平成8年(行ケ)9号 判決 1998年6月17日

東京都千代田区丸の内2丁目2番3号

原告

三菱電機株式会社

代表者代表取締役

北岡隆

訴訟代理人弁理士

樋口武尚

上田守

家入健

横浜市港北区新横浜1丁目5番1号

被告

株式会社ソディック

代表者代表取締役

古川利彦

訴訟代理人弁護士

小坂志磨夫

安田有三

櫻井彰人

同弁理士

高野昌俊

主文

特許庁が、平成6年審判第17738号事件について、平成7年12月5日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1  当事者の求めた判決

1  原告

主文と同旨

2  被告

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第2  当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

(1)  原告は、名称を「ワイヤカット放電加工装置」とする特許第1410446号発明(昭和55年10月30日特許出願、昭和62年4月2日出願公告、同年11月24日設定登録、以下「本件発明」という。)の特許権者である。

被告は、平成6年10月20日、原告を被請求人として、本件特許の無効審判の請求をした。

特許庁は、同請求を平成6年審判第17738号事件として審理したうえ、平成7年12月5日、「特許第1410446号発明の特許を無効とする。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月21日、原告に送達された。

(2)  原告は、平成9年12月2日、本件明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載を訂正する旨の訂正審判の請求をしたところ、特許庁は、同請求を平成9年審判第20421号事件として審理したうえ、平成10年3月6日、上記訂正を認める旨の審決(以下「訂正審決」という。)をし、その謄本は、同年4月3日、原告に送達された。

2  上記訂正審決による訂正前の特許請求の範囲第1項の記載

給電体により給電されるワイヤ電極を用いて被加工物を所望形状に加工するワイヤカット放電加工装置において、上記給電体を中空柱状体で構成すると共に、上記中空柱状体の中空孔に上記ワイヤ電極を挿通させて給電するワイヤカット放電加工装置。

3  訂正審決により訂正された後の特許請求の範囲第1項の記載

給電体により給電されるワイヤ電極を用い、上記ワイヤ電極を絶縁材からなるダイスガイドによってガイドし、加工液を被加工物の加工区域に噴出させ上記被加工物を所望形状に加工し、かつ、上記ワイヤ電極及び給電体の給電部を冷却するワイヤカット放電加工装置において、

上記ダイスガイドを保待すると共に、内部に加工液を導入するダイスホルダーと、上記ダイスホルダー内の加工液中に配設される給電体とを備え、

上記給電体を中空柱状体で構成し、上記中空柱状体の中空孔に上記ワイヤ電極を挿通させ、上記ダイスホルダー内の加工液を上記中空孔に通すと共に、上記中空孔の内部面に部分接触させて給電するワイヤカット放電加工装置。

(注、下線部分が訂正個所である。)

4  本件審決の理由の要旨

本件審決は、本件発明の要旨を訂正前の特許請求の範囲第1項記載のとおりと認定したうえ、本件発明は特開昭47-20797号公報記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものと認められ、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は同法123条1項の規定により無効とすべきものとした。

第3  当事者の主張の要点

1  原告

本件審決が、本件発明の要旨を訂正前の特許請求の範囲第1項記載のとおりと認定した点は、訂正審決の確定により特許請求の範囲第1項が前示のとおり訂正されたため、誤りに帰したことになるので否認する。

本件審決が本件発明の要旨の認定を誤った瑕疵は、その結論に影響を及ぼすものであるから、本件審決は、違法として取り消されなければならない。

2  被告

訂正審決の確定により特許請求の範囲第1項が前示のとおり訂正されたことは認める。

第4  当裁判所の判断

訂正審決の確定により特許請求の範囲第1項が前示のとおり訂正されたことは当事者間に争いがなく、この訂正によって、特許請求の範囲第1項記載の発明に新たな構成要件が付加されたことにより、特許請求の範囲が減縮されたことは明らかである。

そうすると、本件審決が、本件発明の要旨を訂正前の特許請求の範囲第1項記載のとおりと認定したことは、結果的に誤りであったことに帰し、この要旨認定を前提として本件発明が特開昭47-20797号公報記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものと判断したことも誤りであったものといわざるを得ない。そして、この誤りが本件審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、本件審決は、瑕疵があるものとして、取消しを免れない。

よって、原告の請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中康久 裁判官 石原直樹 裁判官 清水節)

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